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「風と行く者」上橋菜穂子

よかった。
とてもよかったです。

児童文学の「精霊の守り人」の最新作です。
外伝というくくりになっていますが、内容的に続編です。

完結から何年もたって生まれた、
作者自身も「ない」と言っていた、続編。
すばらしい作品でした。

主人公の女性と育ての父親の話になります。

過酷な、こんなにひどいことってあるだろうかと
思わずにいられない運命の中で、
あらゆるものをあきらめながら命だけをつなぎ、
必死に生きてきた二人。
無敵の短槍つかいだった養父に守られ、
鍛え抜かれた女の子は成長してすご腕の女用心棒になり、
養父は不敗のまま病でこの世を去っています。

思い出すのもつらい子供時代を、
ふしぎな運命に導かれて
ふたたびまた見つめることになる主人公、
バルサ。

厳しかった養父。
こぶしで殴られたときにも
愛は確かに注がれていて、
同時に伝わった悲しみや憎しみ。
胸をしめつけます。

大人になった今振り返ると、
さんざんだった青春時代には
砂金のようなつぶがあちこちに沈んでいて、
あたらしく見つける愛もありました。

人が生きて死んでゆく流れのなかで
家族も財産も家もない、そんな人間は
何も残さないと思っていたけれど
確かに残るものがある、と
大きく感じさせてくれる作品です。

この作者の本は独特で、
少ない文字数で的確に情景を伝えてきます。
漢字も少なく、一見さらっと入り込めるのですが
気づくと世界の中にいます。
そのかわり、一文字も読み飛ばせない。
うかつに読み流せばあっというまに引き戻されてしまうからです。
真剣にむきあうほど、強い読書体験を返してくれる本です。

父を亡くし、中年に入った私は
この本を読むにあたり
その辺の人よりだいぶ優位に立っております。

何度も泣けました。
親子の愛、子を思う母の愛、大人の愛、
様々な愛が風のようにわき上がっては
当りをとりまき、流れてゆきます。
とても良い本でした。

作者の方が「一度は断念したこの作品が書けたのは、
私の人生が進んだからです」
とおっしゃっていました。
数年前お母様を亡くされたそうです。












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